2008.11.3更新

新・北海道石炭じん肺訴訟損害賠償請求事件
(第1陣〜第3陣)
事件名:新・北海道石炭じん肺訴訟損害賠償請求事件
(第1陣〜第3陣)
係属機関:札幌地方裁判所民事第5部合議係(中山幾次郎裁判長)
       事件番号 第1陣:平成17年(ワ)第1857号 外
              第2陣:平成19年(ワ)第1046号 外
              第3陣:平成19年(ワ)第2064号 外
次回期日:第2陣:12月19日(金) 11時〜
       手続は弁論準備 (一般傍聴は不可、使用法廷も未定)。
       (次々回は1月23日(金) 11時〜の予定)
       第3陣:11月21日(金) 10時〜
       手続は口頭弁論期日(抽選の可能性はあるも一般傍聴は一
       応可能、使用法廷は現在のところ8階5号法廷の予定)
次回期日の予定:
   第2陣:1月の和解に向けた手続の進行状況の確認。
        その他の原告については、引き続き詰めの作業を継続
   第3陣:メインは口頭弁論期日における、
        原告側からの国の消滅時効の援用の主張に対する反論。
        その他、双方の和解に向けた準備の進行状況の確認。
   第1陣訴訟は、2008年2月8日に、全員和解が実現して訴訟は
   終結しました。
紹介者:川島英雄弁護士


【事件の概要】
(1) 当事者
  原告:北海道内に存在した炭鉱において、坑内粉じん労働に従事してじん肺に罹患した者、あるいはじん肺に罹患しその結果死亡した被災者の相続人
  第1陣の原告数は246名
  第2陣の原告数は現時点で477名
  第3陣の原告数は現時点で296名

  被告:国

(2) 請求の内容の概要
  じん肺により原告らないし被災者がそれぞれ被った精神的苦痛に対する慰謝料の請求

(3) 請求の原因の概要
  「じん肺」 とは、炭鉱における粉じん労働によって罹患する不可逆的で進行性の疾病をいう。
  「じん肺」 に罹患するという知見は、遅くとも昭和初期にはその予防のための工学的対策を含め確立していたが、 国は石炭の生産を優先させるべく格別の法制を敷き、昭和35年4月に保安規制の権限を直ちに行使することが可能であったにもかかわらずこれをしなかった。
  なお、最高裁は、通産大臣が昭和35年4月以降 「鉱山保安法に基づく…保安規制の権限を直ちに行使しなかったことはその趣旨・目的に照らし、 著しく合理性を欠く」 と国の不法行為責任を認めている (筑豊じん肺訴訟最高裁判決)。

【手続きの経過】
第1陣
  2005年に提訴。第2陣以降と比べてかなり早期に提起した訴訟のため、和解済みの原告数も多い。

第2陣
  2007年4月に提訴。追加提訴も行っており、今後も随時追加提訴する可能性がある。

第3陣
  2007年7月に提訴。追加提訴も行っており、今後も随時追加提訴する可能性がある。

【現在の状況】
第1陣
  12月4日の期日では、残る7名の原告のうち、1名については和解可能と国から回答あり。 ほか6名について次回期日に全員和解したいと考えており、4名については国からの和解可能か否かの回答待ち、 2名については原告側で必要な準備を行う予定である。

  2008年2月8日(金)
  「全員和解が実現して、第1陣の訴訟を終結」

     [全面和解声明]

第2陣
[2007年12月21日の期日の内容]
  国が申し立てた調査嘱託の一部について、労働局から回答あり。
  今後も順次回答される見込みなので、順調なら、2月末から3月ころまでに原告全員分の回答がなされる見込み。

[2008年2月15日の期日の内容]
  国が申し立てた調査嘱託の一部について、さらに労働局から回答あり。
  順調なら、3月末までに原告全員分の回答がなされる見込み。
  また、原告らの就労歴に関する国からの疑問点を期日間に明示してもらい次回期日までに原告らで回答することになった。

[2008年4月25日の期日の内容]
  国が申し立てた調査嘱託については、全て労働局から回答あり。
  原告らの就労歴に関する国からの疑問点について、原告らから一部回答。引き続き次回期日までに回答予定。
  国が原告らに 「鉱業権者」 等を明らかにするよう求めてきたが、原告らでできることには限界があることから、可能な範囲でのみ、原告らが対応することにした。
  原告らと企業との和解状況については、次回期日までに原告らから示すことにした。
  そのほか、相続関係の書証を提出。

[2008年6月27日の期日の内容]
・原告2名について訴訟を取り下げ。
・国から出されていた個々の原告の就労に関する疑問点につき、原告側から補充の書証等を提出。
・国から依頼されていた 「鉱業権者等リスト」 への回答につき、原告側で可能な範囲で対応し、120番まで回答済み。
  今後期日間に、さらに国から追加依頼がなされる予定。
・原告らと企業との間の和解状況について、必要な範囲で原告から情報を提供。
  次回期日までに、国が今後の対応を検討してくる。
・相続関係の書証を追加提出。

[2008年9月5日の期日の内容]
・被告国から依頼されていた 「鉱業権者等リスト」 への回答につき、原告側で可能な範囲で対応し、352番まで回答済み。 今後近日中にさらに国から最後の追加依頼がなされる予定。 原告側で10/3までに回答予定。
・既に 「鉱業権者等リスト」 に回答済みの352番までの原告のうち、国が和解可能性があると考えた原告については、国から企業に対する調査嘱託を予定。 企業からの回答が整い次第、一部の原告については和解できる見込み。
・相続関係の書証を追加提出。

[2008年10月24日の期日の内容]
・原告 (現時点で総数475名) のうち、106名について、裁判上の和解が成立。
・今後も、今回和解が成立した原告と同様の手続にしたがって、国が和解可能と考えた原告について、順次企業に対する調査嘱託を行い、 その回答を得た段階で、和解をしていく予定。
  次回の和解は1月の期日で成立させる予定。
・原告側は、遺族原告の相続関係の書証をさらに追加提出し、あわせて、提訴後に亡くなった原告の承継・相続等の対応を行う。

第3陣
[2008年2月15日の期日の内容]
  第2陣の調査嘱託が終了後直ちに第3陣分の調査嘱託ができるよう、国は3月に調査嘱託の申立をする予定。
  また、第3陣には企業と交渉する予定の原告とそうでない原告がいるので、企業交渉の予定のない原告について国との和解を先行させるべく、 原告らで対象原告をリストアップすることにした。

[2008年4月25日の期日の内容]
  第3陣分の調査嘱託を国は申立済み。
  企業交渉の予定のない原告について国との和解を先行させるべく、原告らで対象原告をリストアップして提出。
  相続関係書類や訴訟承継のための準備を次回までに行う予定。
  第4次提訴を行ったので、次回期日までに必要書類を提出予定。

[2008年6月27日の期日の内容]
・管理区分決定・合併症認定についての調査嘱託は、第3次提訴までの原告約300人のうち、約半数の回答あり。残りも近日中に回答される見込み。
・国は第2陣同様、個別原告に疑問点があれば指摘することになった。
・第4次提訴分の訴状、答弁書を陳述。
  国が第4次提訴原告の一部に対し、消滅時効の援用の主張をしてきた。
  原告らは、次回までに、国の消滅時効援用の主張に対する反論を予定。
  第4次提訴分についても、いずれ調査嘱託がなされる予定。

[2008年9月5日の期日の内容]
・管理区分決定・合併症認定についての調査嘱託は、第4次提訴の原告1名分以外は終了。
・国は第2陣同様、個別原告に疑問点があれば指摘し、また、原告全員について、「鉱業権者等リスト」への回答を求めてくる見込み。
・相続等の補充証拠の準備は出来る範囲で随時対応することとした。
・国の消滅時効の援用の主張に対し、原告らは、11月10日までに反論の準備書面を提出予定。 この準備書面を公開の法廷で主張すべく、次回期日を口頭弁論期日とすることとした。

【裁判の目的】
  先に述べたとおり、石炭じん肺に関する国の責任については、既に最高裁判決で結論が下されている。この最高裁判決を受けて国は、当時全国の他の裁判所に係属中の石炭じん肺訴訟については積極的に和解に応じたものの、以後も続々と認定を受けるじん肺患者に対する積極的な支援策にまでは踏み込まなかった。

  このため、現在も新たに認定を受けているじん肺患者は、既に最高裁判決で結論が下されている国の責任をさらに追認してもらうための訴訟を提起しなければ、国からじん肺罹患に関する損害賠償を受けることができない状況にある。他方で、国は、最高裁判決の要件に該当する患者については、訴訟を提起した上での裁判上の和解による解決には応じている。
  このため、本訴訟は、基本的には判決を第一の目的とするものではなく、上記の裁判上の和解を目指した訴訟となっている。

【一言アピール】
  最高裁判決が下されていることにより、既にじん肺は解決しているとの印象が世の中に広まっているのではないかということを危惧している。

  じん肺は粉じんを吸引したことにより発生する不可逆的な病気であり、また、発症までにある程度の期間を要するものでもある。 北海道の石炭鉱山は、釧路の炭鉱を除けば主なものは平成7年頃までにほぼ閉山したが、 この頃以前に炭鉱内で働いていた労働者が、現在になってようやくじん肺として認定を受けるようになったという事例も多数存在するのである。

  なお、釧路にある太平洋炭鉱は北海道内で最も遅く、平成14年に閉山したが (ただし現在も別会社が規模を縮小して引き継ぎ稼働中)、 第3陣にはこの太平洋炭鉱に在籍していた労働者も一定数含まれており、今後も当面の間はじん肺の認定を受ける患者がいなくなることはないと思われる。

  また、とくに本件訴訟の対象となっている石炭じん肺は、国全体の経済的発展のため国政上、積極的に進められた石炭政策の犠牲の下に生じたものであり、 石炭政策によるわが日本の経済的発展は、じん肺患者の健康と生命の犠牲の下に成り立ったと言っても過言ではないのである。

  このように、じん肺は決して過去の事件ではない。現在もじん肺に罹患して苦しんでいる患者が多数存在しており、 これらの患者の苦しみは我々の経済的恩恵の負の遺産なのだということを、ぜひ国民全体にご理解いただきたい。

文責 弁護士 川島英雄