2008.10.3更新

JAL客室乗務員監視ファイル事件
事件名:JAL客室乗務員監視ファイル事件
事件の内容:プライバシー侵害、団結権侵害による慰謝料
        合計4818万円の請求。
        客室乗務員らは、プライバシー侵害で慰謝料22万円の請求。
        CCUは、団結権侵害で慰謝料550万円請求
当事者:客室乗務員194名 (OB・OG18名を含む)
     日本航空キャビンクルーユニオン(略称CCU)
       VS
     JAL、JAL労働組合(略称JALFIO)、JALFIO役員ら5名
係属機関:東京地方裁判所 民事第19部中西裁判長
次回期日:10月22日(水) 10時30分 東京地裁民事19部 弁論準備室
次回期日の内容:弁論準備。傍聴はできません
           プライバシー権の判例、監視ファイルの違法性について
           の主張、反論。証人申請。
           期日終了後、報告集会があります。10月22日
           11時半から 弁護士会館5階 502ABCD会議室
紹介者:長尾詩子弁護士・小貫陽介弁護士
連絡先:東京南部法律事務所   日本航空キャビンクルー・ユニオンHP


【事件の概要】
(1) 監視ファイルとは?
  JALFIOが収集保管する、9862名の及ぶJAL所属の客室乗務員についての個人情報を記載した情報ファイル(以下、「監視ファイル」)。
  ファイルには、158項目にわたる記入欄があり、個人情報が記載されている。具体的には、住所、氏名、生年月日等の基本情報に加え、思想・信条、家庭環境、 個人の病歴、容姿や性格が記載されていた。また、勤怠、個人評価など、JALしか知り得ない情報の記載がある。

(2)事実経過
  2月26日、週刊朝日3月9日号 「JAL 驚愕のスクープ! 社内スパイ暗躍 極秘! 客室乗務員監視ファイル」 との記事掲載。 この報道により、今回問題となっている監視ファイルの存在が明らかになった。

  その後、客室乗務員らがJALFIOに対し、自らの監視ファイルの開示を求めたが、監視ファイル内の重要部分に多数の黒塗りのあるファイルしか開示されなかった。

  そのため、多数の客室乗務員が、東京地裁に、JALFIOが保有している監視ファイルについて証拠保全を行った (4月4日、5月16日、6月28日、8月30日の計4回)。

  証拠保全により入手した監視ファイルの分析及びJALFIO・JALの説明より、多数のJAL管理職が長期間にわたりJALFIOに対して情報提供を行い、 監視ファイルの作成に関与してきたことが明らかになった。

  なお、JALは、監視ファイル作成に関与した従業員のうち、1名を停職30日、1名を出勤停止7日、2名を譴責、21名を厳重注意の懲戒処分とした。

【本件提訴の意義】
  まず、本件は、企業の従業員に対するプライバシー侵害としては、日本を代表する航空会社であるJALで行った、これまでないほど大規模かつ悪質なケースである。 本件についての司法判断は、企業の従業員の個人情報の管理について、多大な影響を及ぼすと考えられる。

  次に、公共輸送機関である航空会社JALにとって、旅客の安全を守ることは最優先課題として求められる責務である。 客室乗務員は、客室の保安と旅客の安全確保のために保安業務と旅客に快適な空の旅を提供するためのサービス業務に従事するため、 人間関係・チームワークの確立なしには、その業務を円滑に行うことはできない。

  今回の監視ファイルの発覚で、JALが、分裂労務政策の遂行のため、JALFIOと相互に情報を提供し、 一体となり全客室乗務員の職場内外にわたる生活行動のひとつひとつを、密かに監視し、その個人情報を収集、蓄積し、 客室乗務員らのプライバシーにかかわる個人情報を記載することを予定したリストとしてデータ化、管理し、組合脱退工作として利用してきたことが明らかになった。

  今回の提訴は、このような分裂労務政策を止めさせ、安全で快適なサービスを旅客に提供するため、客室乗務員らが自由に人間関係を形成し、 意見を言える職場を取り戻すことを目的として提訴した。

【手続きの経過】
  2008年2月7日午後1時半から第1回口頭弁論が行なわれ、弁護団の意見陳述、原告団代表、原告の意見陳述が行なわれました。

  この第1回口頭弁論の冒頭で、JALの代理人は、驚くべきことに、「原告の請求を認諾する (原告の請求を全て認める)」 といい、 JALは全面的に敗訴したことになりました。

  その後、訴訟に全面的に敗訴したにもかかわらず、JALは反省し、謝罪するどころか、 「大所高所の観点から、可能な限り早期に本訴訟を終了させることが最も適切であるとの判断」 したと広言しています。

  しかし、単にJALは、監視ファイル作成への組織的な関与の事実を隠蔽するため、また、新たなプライバシー侵害の事実の発覚を恐れたにすぎません。

  損害賠償を求められて、その請求を全て認めるということは、 その前提となる事実 (すなわち、監視ファイル作成へのJALの組織的な関与) を全て認めたのに等しいのです。

  それにもかかわらず、JALは、事実は認めないが賠償は支払うと詭弁を弄し、敗訴して訴訟を終了させました。 しかし、これ以上の事実の隠蔽を防ぐべく、原告団、弁護団は、現在、3月14日の第2回口頭弁論に向けて準備中です。

    原告団長意見陳述    原告意見陳述 2008.2.7

  5月8日の内容
  JALFIOが弁済の抗弁を提出。
  JALが賠償金を支払ったから、JALFIOは支払う必要がないと主張。

  7月2日の内容
  原告がプライバシー権・自己情報コントロール権・職場における自由な人間関係を形成する自由などの人格的権利とは何かについての主張を行なった。

【一言アピール】
  原告は、お金ではなく、JALの謝罪及び分裂労務政策の是正を求めています。

  それにもかかわらず、JALは、「謝罪も是正もしない。金さえ払えばいいんだろう」 という対応に出ました。

  今回の訴訟におけるJALの対応には到底納得できるものではありません。
一連の企業の不祥事から、国民は、会社内に不都合な事実があるとき、それを認め、公表したうえで是正することを求めています。

それにもかかわらず、JALは未だにそれを学んでいないことが明らかになりました。それどころか、 「大所高所の判断」 と、自社に不都合な事実を認めずに隠蔽しようとする旧態依然のJALが、 コンプライアンスの重視されるべき現代社会において国民に選ばれる航空会社となれるのでしょうか。

  訴訟を終わらせた以上、JALは訴訟に敗訴した以上、事実を自ら明らかにし、認めたうえで原告らに二度と行なわないと謝罪すべきです。

  空の安全を求める本訴訟へのご理解、ご支援をよろしくお願いいたします。

文責 弁護士 小貫陽介