2008.7.20更新

「『健康で文化的な最低限度の生活』 (憲法25条)
の保障を!」 生存権裁判

事件名:東京生存権裁判 (東京地裁平成19年(行ウ)第75号ほか)
内  容:生活保護における 「老齢加算」 廃止処分の
     取消しを求める行政訴訟
当事者:東京都内に在住する70歳以上の生活保護受給者12名
                         VS 地方自治体 (7区、3市)
係属機関:東京都地方裁判所民事第2部 (大門匡裁判長)
  2008年6月26日、東京都地方裁判所民事第2部 (大門匡裁判長)は、全国の請求をすべて棄却する判決を下しました。
7月8日、原告全員について、控訴しました。
係属機関:東京高等裁判所民事部 (係属部は未定)
紹介者:渕上 隆弁護士
連絡先:東京都生活と健康を守る会連合会 (都生連)
     電話:03-5343-9531


【訴訟にいたる経過】
  2007年2月14日、東京都在住の70歳を超える生活保護受給者12名が、居住地各自治体を被告に老齢加算廃止処分の取消しを求める訴訟を、 東京地方裁判所に提訴しました。

  この裁判は、憲法25条で保障される 「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」 の回復を求めるものです。 同種訴訟は、京都・秋田・広島・新潟・福岡・青森・神戸の各地裁に係属しており、全国で100名を超える原告が裁判を闘っています。

  今般廃止された老齢加算制度とは、原則70歳以上の生活保護受給者について、特別の需要があるとして、一定額の保護費を加算支給する制度であり、 1960 (昭和35) 年の創設以来、42年以上にわたり維持されてきました。

  ところが、政府は、2003 (平成15) 年、老齢加算制度を廃止する方針を決定し、2004 (平成16) 年度から段階的に削減し、 2006 (平成18) 年度で全廃してしまったのです。これは、社会保障審議会福祉部会の生活保護に関する専門委員会の答申である、 生活保護給付額を全世帯下位10分の1にある低所得世帯層の生活水準まで削減することを内容とした 「中間取りまとめ」 を背景にしています。 この 「中間取りまとめ」 は、いわゆる 「小さな政府」 論を推し進めた小泉内閣の、 社会保障費の抑制を内容とする 「経済財政運営と構造改革に関する基本方針 (骨太の方針)」 に基づくもので、 何が 「健康で文化的な最低限度の生活」 なのかの検証が全くおろそかにされています。

【老齢加算受給者の生活状況】
  もとより老齢加算受給者は、制度の廃止前も、タンパク質の取得も肉・魚などは遠慮し、豆腐等安いものでまかなうといった食生活を送り、 入浴も概して3日に1度、夜中は消灯を早める、暖房具の使用に代えて厚着をするなどして、水道代、光熱費も節約してきました。 それでも、友人・親族等の冠婚葬祭の際にも、祝儀金・不祝儀金などを工面できないため、出席どころか連絡すら取ることができないことが少なくありませんでした。 もともと老齢加算受給者はぎりぎりの生活を送っていたのです。

  ところが、老齢加算制度の廃止によって、東京都では老齢者の生活保護給付額が一人当たり年間約20万円削減されました。 老齢の生活保護受給者は、「健康で文化的な最低限度の生活」どころか、生きていくこと自体が危ぶまれています。

【訴訟の目的】
  今、格差社会が進行し、富裕層はより豊かになりながら、他方で、働いていても生活保護費以下の収入しかなく生活の維持に非常な困難を来たす、 いわゆる働く貧困層 (ワーキングプア) に象徴されるように、国民の間に深刻な貧困と格差が広がっています。 「小さな政府」論による生活保護費の削減は、この深刻な貧困と格差の問題を放置することに通じます。 私たちはこの生存権裁判によって、老齢加算制度を復活させるだけでなく、憲法25条で保障された 「健康で文化的な最低限度の生活」 の中身を問い、 さらには政府の社会保障政策を抜本的に転換させることを目指します。

  原告らは、73歳から83歳までといずれも高齢です。残されている時間は多くありません。 私たちは、広く国民世論に依拠し、早期の解決を目指して全力を尽くすことを表明します。

【手続きの経過】
  これまでに5回の口頭弁論を重ねてきましたが、今回12月10日の口頭弁論で主張の応酬はほぼ終了し、 2008年1月28日 (PM 1:30〜5:00 103号法廷) に行われる人証調べ (原告本人尋問) を経て、3月24日(PM 2:00〜3:00 103号法廷) には結審し、 6月には全国に先駆けて判決を迎える予定です。

  1/28の期日では、金澤誠一証人 (仏教大学社会学部教授) 尋問
(1) 格差と貧困が広がる中で低所得者層との比較で生活扶助基準を引き下げることの不当性
(2) 高齢者には、交際費など他の世代より多く費用がかかる「特別需要」が存在すること

を明らかにし、老齢加算廃止の不当性を明らかにした。

  また、原告3名の本人尋問によって、高齢の生活保護受給者の生活の実態及び老齢加算廃止により生存権が侵害されている実態を明らかにした。

[資料]
  訴  状 PDF
  第一準備書面 ( 7月23日提出) PDF
  第二準備書面 ( 7月23日提出) PDF
  第三準備書面 ( 9月10日提出) PDF
  第四準備書面 ( 9月10日提出) PDF
  第五準備書面 (10月29日提出) PDF
  原告最終準備書面の第1章の要点 (2008年3月24日提出) PDF
  原告最終準備書面の第2章の要旨 (2008年3月24日提出) PDF


文責 弁護士 渕上 隆