神田駅超高架化差止訴訟
事件名:神田駅超高架化差止訴訟
内 容:神田駅を中心とした 1.3Kmにわたる高さ約30メートルの二重
高架の建築工事の差止め請求
係属機関:東京地方裁判所 (第13部合議A係 山田俊雄裁判長)
事件番号 平成19年(ワ)第19718号
次回期日:12月3日(水) 午前10時〜 103号法廷
傍聴希望の方は直接法廷へどうぞ
次回期日の内容:被告の主張に対する反論 (準備書面提出予定)
連絡先:神田の環境を守る会 FAX:03-3252-4157
神田重層架弁護団事務局 お茶の水合同法律事務所
TEL:03-5298-2601(代) 弁護団事務局長 大辻寛人
|
【事件の概要】
[はじめに]
JR東日本は、東京上野間の約 3.8qに、東北・高崎線及び常磐線と東海道線の相互直通運転ルートを整備する、東北縦貫線計画を進めている。
その中で、神田駅を中心として 1.3Kmにわたり8階建てのビルに匹敵する、高さ約30メートルの二重高架を建築しようとしている。
この計画について神田住民らが原告となり、(1) 重層架が災害時に甚大な被害を周辺に及ぼす危険があること、
(2) 騒音、振動、圧迫感などにより、神田の生活環境が悪化し、都市が破壊されること、(3) 国鉄と交わした確認書に基づき、
重層架は建築しないという約束を根拠に、建築工事の差止めを求めている。
1 当事者
原告 神田住民
被告 東日本旅客鉄道株式会社 (JR東日本)
2 請求の内容の概要
被告JR東日本は、東京駅から神田駅、秋葉原駅間の線路上において、二層以上の重層式高架橋を建設してはならない。
3 請求原因の概要
(1) 重層架は、災害時に周辺に甚大な被害を及ぼし、神田住民の生命・身体に重大な危険を及ぼす。
(2) 重層架建築により、電車の通過本数が増加し、騒音・振動が増大する。また、巨大な重層架の出現により、日照、景観、風環境に悪影響を及ぼし、
ヒートアイランド現象を惹起するなど、神田の生活環境が悪化する。
(3) 昭和58年8月31日、旧国鉄と神田住民の間で、重層架を建築しないとの確認書を交わした。今回の工事は、この確認書に基づく約束に反している。
以上を3本柱とした請求である。
【手続の経過】
1.東北縦貫線 (重層架工事) についての過去の流れ
※ 東北縦貫線とは、現東北新幹線の上に線路を作り (重層架橋)、東からは上野駅止まりの高崎・宇都宮・常磐の三線を東京・品川駅まで延伸し、
西からは東京駅止まりである東海道線を上野駅まで延伸し、高崎・宇都宮・常磐線に乗り入れる縦貫線路をいう。
昭和47年
旧国鉄が、東北新幹線の神田地区通過計画を発表(新幹線東京駅延伸)。
計画は神田駅を中心に全長 1.3q、新幹線の上に在来線(縦貫線)を乗せ、2階建てで走らせると言う重層架計画で、高さは21メートルだった。
この計画は住民を無視し着工しようとしたので、すぐに神田地区東北新幹線対策委員会が設置され、以後10年以上にわたって反対と交渉が続いた。
昭和52年3月
対策委員会が千代田区議長あてに 「東北新幹線計画案に反対する請願書」 を提出し、これに基づき千代田区議会が昭和52年4月8日、
議長名で時の運輸大臣、国鉄総裁、工事の責任者である旧国鉄東京第一工事局長あてに 「住民の意思を無視する東北新幹線計画に反対する意見書」 を提出した。
昭和58年8月24日
旧国鉄との連絡会議で東京第一工事局伊藤次長から、「縦貫線は、今回の新幹線計画から取り外し二重高架を取り止めとする」 との申し入れがあった。
昭和58年8月31日
「確認書、縦貫線については、廃止する事が提示された対策委員会はこれを評価する。これを前提として今後新幹線工事推進に伴う諸問題については、
前向きに合意するよう相互に協力するものとする。昭和58年8月31日」 という内容の確認書が、
神田地区東北新幹線対策委員長川上豊太郎氏と旧国鉄の第一工事局大島聰課長により交わされ、縦貫線は廃止された。
※ 以上の経過により、平成3年6月に東北新幹線東京駅始発の運行が開始されることとなった。
2.今回の計画について
※下記内容は、JR東日本発行 「東北縦貫線事業概要」 に基づく
事業目的
東京駅〜上野駅間に東北・高崎線及び常磐線と東海道線の相互直通運転ルートを整備することにより、山手線、
京浜東北線 (御徒町駅〜上野駅間) の混雑率を緩和し、相互直通運転により所用時間を短縮するとともに、
首都圏を南北に結ぶ輸送ネットワークの強化により交流の促進及び地域の活性化に寄与することを目的とする。
※ 京浜東北線 (御徒町駅〜上野駅間) の南行は、東京圏における最混雑区間であり、平成15年JR東日本による説明の混雑率は225%で、
この事業完成時混雑率は180%に緩和との事。(しかし、平成17年度の混雑率は214% (ラッシュ1時間) で二年間に 4.8%の自然減になっている)
事業内容
1 事業区間
→東京 (千代田区丸の内一丁目) を起点とし、上野 (台東区上野七丁目) を終点とする延長約 3.8qの区間
2 東京駅から約 0.9qは、東海道線の引上線の線路改良、そこから神田駅〜秋葉原駅間約 1.3qは、高架橋新設及び既設高架橋の改良、
秋葉原駅〜上野駅間約 1.6qは、留置線の線路改良を行うことにより、東北・高崎線及び常磐線と東海道線の相互直通運転ルートを整備する。
高架橋新設及び既設高架橋改良区間の約 1.3qのうち、東北新幹線の上部に高架橋を新設する神田駅付近約 0.6qを重層部、
東京駅方面から重層部までの約 0.35qを東京方アプローチ部、重層部から秋葉原駅までの約 0.36qを秋葉原方アプローチ部とする。
東京方アプローチ部と秋葉原方アプローチ部は、高架橋新設及び既設高架橋の改良を行い、重層部は、東北新幹線の上部に高架橋を新設する。
3.今回の計画の交渉経緯と現在まで
原告が問題としているのは今回の計画も前回廃止された計画とまったく同じ計画であり、前回よりも新幹線の二階建て車輌のため更に高くなった重層部、
すなわち重層架の建築である。
平成14年6月7日
JR東日本東京工事事務所による説明会。
この説明会は過去の東北新幹線対策委員会の流れを汲む神田駅東地区整備協議会に対して行われたもので、それ以来、神田駅東地区整備協議会が窓口となる。
説明会において、過去にあった約束と違うなどの重層架計画に異を唱える住民の発言があった。
同年10月19日
旧千桜小学校にて意見交換会 (集会参加者 100名)
白紙撤回を求める決議が参加者全員一致でなされた。
同年11月20日
住民側は、千代田区議会に対し、重層架計画の白紙撤回を陳情した。
同様に、千代田区長に対して重層架計画の白紙撤回につき協力要請を、国土交通省 (鉄道局施設課) に対して重層架計画の白紙撤回の申し入れ。
同年12月4日
東京都 (都市計画局長) に対し、重層架計画の白紙撤回の申し入れ。
都庁記者クラブ (参加者24名) に資料を配付し協力を要請。
同年12月5日
JR東日本本社 (建設工事部長) に対し計画の白紙撤回の申し入れ。
同年12月19日
元通産大臣与謝野馨氏に面会し、協力要請。
平成15年8月4日、22日、10月7日、12月25日
JR側との話し合いの席がもたれた。
平成16年2月28日
JR東日本からの回答書に対する 「経過報告並びに意見交換会」 を、集会参加者約150名の関係者で開催する。
結果は縦貫線の白紙撤回を全員一致で再確認し、さらに運動を推進させ、署名運動を行うという方針で固まった。
平成17年7月30日
JR東日本による神田住民に対する一回目の合同説明会が旧今川中学校にて開催される。
この説明会の中で、JR東日本の司会者から強引に環境アセスメントを行わせて貰いたいとの発言が、説明会終了時にあった。
この発言に窓口である神田駅東地区整備協議会から反対意見がでた。
同年8月9日
窓口の協議会よりこの説明会のこの時点での環境アセスメント申請は無効であるとの申し入れ書を各機関に提出した。
千代田区長、千代田区議会、国土交通省鉄道局施設課、東京都庁都市整備局都市づくり政策部都市計画課に要望書を、
JR東日本本社と地元の窓口のJR東日本東京工事事務所に申し入れ書を提出した。
平成17年12月17日
JR東日本による2回目の合同説明会が神田さくら館で開催された。
住民側に対して、環境アセスメントの説明と実施のお願いがあった。
会場は反対派多数。
平成18年2月1日
JR東日本東京工事事務所より突然アセスメントを2月下旬に実施するとの 「お知らせ」 が来る。
これに対し、「住民の合意が出来ていないので、断固拒否する。」 との書面をJR側に提出し、その後21日までに関係各機関に協力要請のお願いを行った。
同年2月18日
JR東日本東京工事事務所が地元住民の意思を無視して東京都に環境アセスメントを申請した。
同年3月18日
これを受けて地元の反対住民及び関係者130人が集まり、アセスメントに関する意見交換会を開催し、対応策を協議した。
平成18年11月25日
有志による 「神田の環境を守る会」 発足。「神田の環境を守りましょう」 と題して東北縦貫線反対の署名運動開始。於 旧今川中学校 出席約100名。
当日あわせてJR東日本による東京都環境アセスメントの説明会があり、住民からは申請は認められないとの強い意見が多数出た。
平成19年1月
東北縦貫線反対の署名運動の第一回締め切り。
約二ヶ月間で千代田区民1,118名、千代田区以外の都民1,157名、14県民869名、外国人1名、計3,145名の署名があった。
平成19年3月26日
「神田の環境を守る会」 ホームページ開始。
もぐれ縦貫線 「東北縦貫線=神田重層化計画」
平成19年6月5日
シンポジュウム開催。於神田さくら館内、千代田小学校 出席約120名
「神田地区JR東日本新幹線重層架化を考える集い」
「神田駅及び神田の街の動向」 と題して有名講師の講演があり、この計画の無謀さを住民が再確認する。
平成20年3月21日
本件重層架工事が認可される (本工事の完成期限平成25年6月30日)。
同年5月30日
JR東日本による東北縦貫線起工式、起工祝賀会開催。
当日会場前にて、「神田の環境を守る会」 有志約30名により反対のプラカード抗議。
4.訴訟手続について
平成19年 8月 1日 住民側訴訟提起 (不作為義務の確認訴訟)
平成19年11月12日 第1回口頭弁論期日
原告⇒訴状陳述、訴状要旨朗読、甲1号証ないし4号証提出
被告⇒答弁書陳述、朗読、乙1号証提出
平成20年 1月21日 第2回口頭弁論期日
原告⇒第1準備書面陳述
平成20年 4月 7日 第3回口頭弁論期日
原告⇒第2準備書面陳述、甲5号証ないし27号証提出
被告⇒準備書面 (1) 陳述、乙2号証提出
平成20年 6月 4日 第4回口頭弁論期日
原告⇒訴えの変更申立書陳述 (→不作為義務確認請求から重層架工事差止請求に変更)、第3準備書面陳述
2008年9月10日 第5回口頭弁論
原告側は、証拠を提出しました。また、原告訴訟代理人弁護士は、提出証拠の立証趣旨を陳述しました。
ここで立証趣旨の概略は以下のとおりです。
住民の陳述書は、被告が縦貫線事業及び重層架建築計画を廃止することを約束した事実、重層架の建築により、日照、通風の阻害、圧迫感、振動、
騒音などが増大すること、また、鉄道車両の脱線や高架からの落下などによる危険性が増大することなどについて立証するものです。
騒音測定記録は、本件重層架建築予定地域周辺において、本件重層化の建築により、列車の通過本数が増大し、
基準値を超える騒音がさらに増大する現実的危険があることを立証するものです。
被告側は、準備書面 (3) を陳述し、環境影響評価書において、予測される騒音レベルはすべての地点で現況の騒音レベルと同程度か現況を下回る結果となっており、
原告らの主張に理由がないこと、確認書に署名した旧国鉄職員は旧国鉄の代理人ではないこと、
東北縦貫線 (東京駅〜上野駅間) 整備事業は、旧国鉄時代の事業となんら関連性を有しないことを主張しました。
証拠として、環境影響評価書、行政指針等を提出しました。
【一言アピール】
〜本件差し止め手続の重大な意義について〜
(以下、「原告第3準備書面第1」 より抜粋、103号法廷における大辻寛人弁護士による朗読部分)
第1 はじめに
本項では本件差し止め手続きの重大な意義について述べる。
この神田駅超高架化工事は、原告ら周辺住民の生活権 (憲法第25条)・人格権に真っ向から挑戦し、
また同時にJRの果たさなければならない公共性に矛盾するものである。この点について順次述べていくこととする。
原告ら神田駅周辺住民は、何代も前から東京都の中心部に位置する街区として神田地区に居住し、その街を歴史の年月をかけて作り上げてきた。
その努力は、日々の商業・製造業・賃貸業等自己の世帯の生計をたてると同時に、それぞれの世帯の生計が近隣の生計とあいまち、
それが街の歴史を形成してきたのである。
旧国鉄神田駅は、これら都市街区の中心に位置し、とりわけ高架下の店舗並びに神田駅北口・東口・西口周辺の商店街、
並びにそれらに続く店舗・事務所の連綿とした繋がりが鍛冶町・須田町・美土代町・神保町とつながり、いずれもその町名に神田という呼称が付けられ、
まさに神田駅という駅の呼称と周辺の街区が一体となって都市を形成してきたのである。
これらの歴史の中で写真・絵画・文学等芸術作品の中にも街区の状況が反映され、文化を形成してきたのである。
JRの神田駅周辺超高架化事業は神田駅及びその周辺の街づくり・都市の形成の歴史と真っ向から矛盾するものである。
この準備書面で後に述べる確認書は、街の歴史を守り、次の世代に住民の文化遺産を継承しようとする人々の身命を惜しまぬ継続的な活動の成果として、
旧国鉄と神田駅周辺住民の間で締結されたものである。
今回の神田駅超高架化事業はこの成果を蹂躙する。言い換えると、この事業は公共性の衣を纏いながら、まことに反公共的な目的を実現しようとするのである。
もともとJRは駅周辺に巨大な公有地がある品川・汐留・大崎・東京・秋葉原・上野・立川・新宿等の駅については、公共の土地を民間に売却したり、
あるいは自ら開発を行ったりしつつ、駅の外に流れる乗降客についてはこれを駅構内に留めて飲食・書籍・雑貨・服飾等のテナントに高い賃料で貸し付けて商業を行わせ、
その結果、駅構外の同業の売上には多大な損失をもたらすおそれのある事業を行ってきているのである。
そして一方、通過駅については本件事業のように周辺の環境悪化などの弊害には目もくれずに事業を強行し、
前記のような優先的に開発する駅への集客を容易にしようとしているのである。
これは乗客の利便を図るという公共性の美名に隠れながら、民間企業と化したJRの営利優先の事業姿勢と言わざるを得ない。
他方、原告らはただ単に自らの生計を守るという目的のみならず、歴史的に形成され、
いったん破壊されれば現状を回復することが困難な歴史的・文化的に形成された 「都市」 を守るためにこの手続きに立ち上がったのである。
裁判所が、原告ら住民の真摯なる主張を傾聴されるよう要望する次第である。
文責 弁護士 出口裕規


|