SHOP99 名ばかり管理職事件(賃金等請求事件)
【事件の概要】 1 当事者 原告 清水文美 被告 株式会社九九プラス 2 請求内容 約450万円のお金を会社が清水さんに支払うよう求める。 (内訳) @ 2007年6月から10月までの期間の残業代相当額として、金748,923円。 A 同額である金748,923円について、 労基法114条に基づき付加金の支払いを求める。 B 清水さんを長時間労働等によって病気にし、就労できない状態したことについての慰謝料として、金300万円。 3 事案の概要 コンビニエンスストアー「SHOP99」。99円、199円、299円など、低価格で商品を提供し、かつ、生鮮食品を取り扱うコンビニエンスストアーである。 これを経営する 「九九プラス」 に、清水文美さんは2006年9月に正社員として入社した。就職氷河期時代にあってなかなか就職できず、 8年ものフリーター生活を続けた後、ようやくつかんだ正社員の口であった。 清水さんは、入社後わずか3ヶ月で、実質店長の立場に置かれ、9ヶ月後の2007年6月からは正式に店長に就任。 「SHOP99」 では、各店舗に正社員が一人しかおらず、あとは全てアルバイトである。24時間営業のコンビニエンスストアで、 アルバイトがシフトに入れない時間帯は、正社員がシフトに入らざるを得なかった。何時間働き続けているとか、休日を取れたかとか、そんなことは関係なく、 シフトに穴が開けば、働かざるを得なかった。清水さんは、もっとも長い場合で、39日間、休日なしで働き、一番ひどいときで、4日間で80時間を超える労働を行った。 4日とは、物理的な時間が96時間である。そのうちの80時間の就労である! このような状況で、清水さんは体調不良、不眠、食欲不振に悩まされるようになっていった。 わずか1年の間に、6店舗に異動させられたことも彼のストレスを募らせた。 2007年10月、ついに清水さんは体調不良で働くことが出来なくなり、休職することになった。 4 提訴に至る経緯 清水さんは自分をここまで追い込んだことには、会社の労働時間の管理システムに問題があると考え、首都圏青年ユニオンを通じ、 病気に対する責任を取ることと共に、長時間残業についての残業代を支給するよう会社に求めた。 ところが会社は、ユニオンとの団体交渉の席上、2007年6月分以降の残業代の支給を拒絶した。 理由は、清水さんが店長であることから、労基法41条2号のいわゆる 「管理監督者」 にあたるから残業代の支給は必要ないと言うのである。 清水さんは、この会社に言い分は全く通用しないと考えている。なぜなら、清水さんは、その労働の実態からして、いわゆる 「名ばかり管理職」 であり、 「管理監督者」 の実態は存在しないからである。 「管理監督者」 の考え方については、日本マクドナルド事件で2008年1月28日、マクドナルドの店長職が、「管理監督者」 ではなく、 会社は残業代を支給しなければならないという東京地裁の判決が出たばかりである。 会社は、この点をユニオンから指摘されても、「マックはマック、うちはうち」 として、対応を改めようとしなかった。 清水さんは、もはや提訴をもって対応するしかないと考えた。 【手続きの経過】 2008年5月9日、清水さんは、東京地裁八王子支部に残業代の支払いと慰謝料の支払いを求める訴訟を提起した。 第1回口頭弁論は7月16日に行われ、訴状、答弁書の陳述のほか、清水さんが訴訟について意見陳述を行った。 ※ 清水文美 意見陳述書 【会社の反論の検討】 「管理監督者」 とは、「労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場において、 同法所定の労働時間等の枠を越えて事業活動することを要請されてもやむを得ないものといえるような重要な職務と権限を付与され、 また、賃金等の待遇やその勤務態様において、他の一般労働者に比べて優遇措置が取られているので、労働時間等に関する規定の適用を除外されても、 上記の基本原則に反するような事態が避けられ、当該労働者の保護に欠けるところがない者」 をいうと解釈されている。 清水さんの場合、一店舗の管理者としての立場に過ぎず、しかもその職務のあり方も会社から厳しくマニュアル化されている状況であり、職務内容、 権限からして経営者と一体的立場になるようなものではなかった。 また、清水さんは店長時代のほうが一般社員時代より賃金が下がっており、一般労働者に比べて優遇措置が取られている事情もない。 清水さんが 「管理監督者」 でないことは明らかである。 【本件訴訟の意義】 「管理監督者」 の意味をどのように理解するのかについて、従来の理解は、非常に厳格なものである。 法定の労働時間を超えたら、割り増しした残業代を支払う。それが、長時間労働をさせないための、労働法の大原則である。 管理監督者は残業代は不要というのは、大原則の例外のルールなのだから、厳密にとらえなければならないのはいわば当然である。 今年1月の日本マクドナルド事件東京地裁判決は、そのことを明確に宣言するものであった。 しかし、大企業側は、このような例外が邪魔で邪魔で仕方がない。もしこれが厳格に運用されてしまったら、 今まで 「名ばかり管理職」 として残業代を支給してこなかった労働者に残業代を支払わなければならなくなる。 日本マクドナルド事件判決を覆すためにも、本件で、大企業側は、がっぷり4つの闘いを組むことにしたようである。 会社側には、経営側の名だたる弁護士が代理人に就任し、管理監督者に関する長文の反論を答弁書で提出してきた。 以上のように、本件は、長時間労働を許さない労働法の大原則を守ることができるか否か、の大事件である。ぜひ多くの方にご注目いただきたい。 文責 弁護士 笹山 尚人