2008.8.6更新

牛丼すき家 「偽装委託」 「名ばかり管理職」 事件
(賃金等請求事件)
事件名:牛丼すき家 「偽装委託」 「名ばかり管理職」 事件
       (賃金等請求事件)
事件の内容:2005年9月から2006年10月分までの期間の残業代相当額合
        計40万2499円 (内訳、原告福岡淳子・金30万7178円、原告
        A・8万299円、原告B・1万5022円) 及び労基法上114条の付
        加金請求として同額を請求。
        さらに、原告福岡淳子について、店舗の売上金紛失の責任と
        して賠償させた金員56万円の返還を請求。
係属機関:東京地方裁判所民事19部
       事件番号 平成20年(ワ)9092号 裁判長 蓮井
次回期日:9月26日 (水曜日) 午前10時〜 東京地裁619号法廷
       傍聴希望の方は、直接法廷にお越し下さい。
       弁論終了後、首都圏青年ユニオンの案内で、場所を変えて報告
       集会を行います。
次回期日の内容:第3回口頭弁論期日。被告会社の主張とそれに対する
           原告側の反論。
           前回期日までにまだ会社側は訴状及び原告の訴え変更
           の請求書に対して全体として反論しきれていない。
           そこで、次回期日には会社側の残る主張を行うのが主
           要点。ただし会社側の答弁は9月1日までに提出する約
           束なので、原告側も可能な限り反論を準備しこの日に反
           論を提出する予定である。それらの書面の応酬が主な
           内容となる。
紹介者:笹山尚人弁護士
原告弁護団:笹山尚人、大山勇一、佐々木亮
連絡先:首都圏青年ユニオン

【事件の概要】
1 当事者
  原告  福岡淳子他2名
  被告  株式会社ゼンショー

2 請求内容 約136万円のお金を会社が原告らに支払うよう求める。
(内訳)
@ 2005年9月から2006年10月分までの期間の残業代相当額合計40万2499円 (内訳、原告福岡淳子・金30万7178円、原告A・8万299円、原告B・1万5022円)
A 労基法上114条の付加金請求として同額を請求。
B 原告福岡淳子について、店舗の売上金紛失の責任として賠償させた金員56万円の返還を請求。

3 事案の概要
  既に東京都労働委員会の手続きで紹介している 「すき家事件」 の民事訴訟である。

  牛丼屋チェーン店、「すき家」。ここのスタッフはアルバイトの身分なのに、長時間労働を強いられ、しかも残業代を法律通りに支払ってもらえていない。 人件費全体を抑制させ、働いたのに全く賃金が出されないケースもある。お店で金銭が紛失すれば、全て現場のスタッフが肩代わりさせられる。

  時給800円からのスタート。フルタイム働いても、ようやく生活できる程度の賃金しか得られない。まさに現代のワーキング・プアそのものである。

  すき家を経営する株式会社ゼンショーは、スタッフが加盟した首都圏青年ユニオンの運動によって、2006年11月分以降の賃金については、 残業代を法律通りに支払う体制に改めた。しかし、2006年10月分以前の賃金については、是正を行っていない。

  そこで、首都圏青年ユニオン組合員ですき家スタッフの福岡淳子らは、この間、会社と組合を通じて話し合うことを求めてきたが、会社は、話し合いを一切拒否。 この話し合い拒否について救済を求めているのが既に紹介している東京都労働委員会の事件である。

  しかし東京都労働委員会を通じて話し合い協議がうまくいかない状況下で、福岡淳子らの賃金も時効を迎えてしまう。賃金の時効は、2年だからである (労基法115条)。

  そこで、賃金の支払いを行うよう、裁判に訴えたのが本件である。

  なお、この訴えの際、店舗での売上金紛失について、福岡淳子が全ての責任を負わされて賃金から56万円を賠償させられている。 この賠償についても理由がないものとして、あわせて返還を求める訴えを起こした。

  参考:不当労働行為救済申立て事件 (東京都労働委員会)
  法律を守ってよ! 〜「すき家ユニオン」

【手続きの経過】
  2008年4月4日、福岡淳子ら3名は、東京地裁に訴訟を提起した。
  第1回口頭弁論は、5月30日に開催。
  第2回口頭弁論は、7月10日に開催された。この日は、原告の福岡淳子が意見陳述をした。 原告福岡淳子の陳述書

【会社の反論】
  会社の反論はまだ全貌が出ていない。
  東京都労働委員会での手続きでの経過からして、「原告らと業務委託契約を締結しており、労働契約を締結していないから労働法の適用はない」 「仮に労働契約であったとしても、福岡淳子は管理監督者であるので、労基法41条2号により残業代の支払い義務は会社にない」 「賠償金については、会社と福岡淳子が、支払いを行う旨合意しているので賠償は有効であり返還の義務はない」 と主張することが予想される (1日1日の個別の労働時間について、認否して就労自体を否認することも考えられる。)。

【本件訴訟の意義】
  労働者が働いた分の賃金を法律通りもらいたい、という当たり前のことを求める訴訟である。 これ自体は当然のことだが、当然のことが認められていない日本社会では大きな意味がある。

  より重要なのは、会社が支払いを拒絶する理由として持ち出している 「偽装委託」 「名ばかり管理職」 の論点である。
  時間で就労し、マニュアルで拘束される店舗のアルバイト従業員が労働者ではないから労基法の適用はないという主張は、極めて珍しい。 原告らは、原告らが労働者でなかったら、日本中からほとんど労働者がいなくなってしまうと考えている。 「労働者性」 が争われているという意味では重大であり、会社の主張が裁判で認められてしまっては、会社が、「委託契約」 を 「偽装」 することが容認されてしまう。

 また、「名ばかり管理職」 問題である。「管理監督者」 とは、「労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場において、 同法所定の労働時間等の枠を越えて事業活動することを要請されてもやむを得ないものといえるような重要な職務と権限を付与され、 また、賃金等の待遇やその勤務態様において、他の一般労働者に比べて優遇措置が取られているので、労働時間等に関する規定の適用を除外されても、 上記の基本原則に反するような事態が避けられ、当該労働者の保護に欠けるところがない者」 をいうと解釈されている。 アルバイトの店長が管理監督者であったら、これまた日本中に残業代を支払わなくてもよい労働者があふれてしまう。

  また、労働者が失敗するたびに、その責任を全部取って賠償に応じていては、労働者は安心して働くことが出来ず、生活そのものがなりたたなくなる。

  舞台は 「すき家」 である。これは働く者、誰にでも起こりうる事件なのだ。

  会社の主張を認めず、当たり前の法律の原則を実現して労働者が安心して働くことが可能な条件を切り開く意味で重要な事件である。 ぜひ多くの方にご注目いただきたい。

文責 笹山 尚人弁護士